よみがえりの草紙
よみがえりの草紙

大阪市平野区の長寶寺には、閻魔王に関する伝承があります。室町時代より伝わる「よみがえりの草紙」(長寶寺縁起)に記された内容をもとに、紙芝居として作成し現代版に編集しました。
ぜひ動画でご覧ください。
地獄を見た尼さん – 慶心(けいしん)の体験記

こんにちは。私は約600年前、室町時代の平野にある寺で修行していた尼の「慶心(けいしん)」です。今日は、私が実際に見た「地獄」の話をお伝えしましょう。
「地獄なんて作り話だ」と思う人もいるかもしれません。しかし、私は二度にわたり地獄を訪れ、その恐ろしさをこの目で確かめました。地獄とは、悪行を悔い改めない者が落ちる場所。一度入れば、長い間耐えがたい苦しみが続きます。
では、私がどのようにして地獄を体験し、どのようにして戻ってきたのか。その驚くべき体験をお話ししましょう。
第一の体験 – 地獄への旅

私はいつものように寺でお経を唱えていました。ところが突然強いめまいに襲われ、深い穴へと落ちていくような感覚に包まれ、そのまま意識を失いました。
仲間たちが必死に私の名を呼んでいましたが、私の声は誰にも届きません。やがて彼らは「慶心さんが死んだ!」と嘆き悲しんだのです。
気がつくと、私は真っ暗な異世界に立っていました。すると突如として「ゴズ」と「メズ」という二体の鬼が現れ、「魂を抜き取る」と迫ってきたのです。恐怖に震える私。
そのとき、どこからともなく穏やかで優しい声が響きました。
「この縄を掴めば大丈夫。」
導かれるままに私はその縄を握りしめ、安心して歩き始めました。しかしどれだけ進んでも寺には戻れず、やがて目の前に美しい宮殿が現れました。
そこに姿を現したのは観音様。
「ここは閻魔様の宮殿です。」
観音様はそう告げました。本来ならば住職が呼ばれるはずでしたが、高齢のため代わりに私が呼ばれたのです。
地獄の案内 – 罪人の苦しみ

宮殿の中央には、恐ろしい形相の閻魔様がどっしりと座っていました。その威圧感に、思わず震え上がる私。
すると、閻魔様が雷鳴のような声で言い放ちました。
「人間は悪いことばかりする!喧嘩をし、嘘をつき、欲深くなり、人を悲しませる!」
私は身をすくめましたが、閻魔様はさらに続けました。
「お前は寺に戻ったら、良い行いをし、人々にも善行を勧めよ。」
その言葉に、私はただ深くうなずくしかなかったのです。
さらに閻魔様は厳かに言いました。
「死んだ者はすべて私の前に来る。生前の行いは『閻魔帳』に記されており、善人は極楽へ、悪人は地獄へ送られる。」
そう言うと、閻魔様は私を地獄へ案内したのです。
地獄の恐怖と閻魔様の証

私は閻魔様に導かれ、地獄の光景を目の当たりにしました。そこには、赤黒く煮えたぎる血の池地獄、魂そのものが消滅する無間地獄、そして熱された鉄に包まれ、もがき苦しむ者たちがいる鉄囲山地獄が広がっていました。
罪を犯した人々は泣き叫び、必死に助けを求めていました。しかし、その声が届くことはなく、ただ永遠に続く苦しみがそこにあったのです。
私は恐怖に震えました。すると、閻魔様が厳かに言いました。
「お前が地獄を見た証として、印を押す。」
そう言うと、私の額に強く印を刻みつけました。焼きつくような熱さが走ります。
「この体験を、寺に戻り、人々に伝えよ。」
閻魔様の声が響き渡り、私は深くうなずくしかありませんでした。
寺に戻った私は毎日祈りを捧げ、村人たちにも地獄の恐ろしさを語り続けました。しかし誰も信じようとはせず「それはただの夢ではないのか?」と疑われるばかりでした。
それでも私は諦めませんでした。何度も何度も説き続け、善行を積むことの大切さを訴えました。
証明と村人たちの変化

それから三年後。お経を唱えていると突如、目の前に青い雲が降りてきました。
すると、住職が静かに言ったのです。
「つかみなさい。」
私は迷わず手を伸ばしました——その瞬間、意識が遠のき、気を失ってしまいました。
次に目を覚ましたとき、目の前には再び閻魔様の姿が。
「今度は手のひらに印を押そう。」
そう告げられた直後、私の手のひらに鋭い痛みが走りました。
ゆっくりと目を開くと、そこには青く光る神秘的な印が刻まれていたのです。
それを見た村人たちは驚き、ようやく私の話を信じました。そして皆が心を改め、善い行いをするようになったのでした。